【ロマンな道具】ぺんてるINJECTO
一投稿目で飛ばしすぎてなかなか後続が続かなさそうなので、今回は趣味で集めているレトロな筆記具を1つ紹介することにした。
《ぺんてる INJECTO》
0.4mmのシャープペンシル。当時の価格は¥1,500。自分はフリマアプリで¥6,000購入した。今から40年以上前の1970年代後半に発売されたものであるが、現在は生産中止になっていて店頭で見つけるのは難しい。自分はこういった古い文具を沢山集めているが、その中でも一二を争うほどこのINJECTOに惹かれている。
その理由は主に下記の3つにある。(また3つかよ。)
①玩具を思い起こす箱、説明書
男は玩具が好きだ。(このご時世これを言うと誰かに怒られそうだがこれが1番ダイレクトに伝わる)レゴでも仮面ライダーのベルトでもゲーム機でも何でも、箱からお目当ての商品と説明書が顔を出す瞬間が1番興奮するものだ。
INJECTOはそれを透け透けのプラスチックの蓋と厚紙というチープな形だが体現してくれている。丸裸で置いてあるのと箱がついてる時の嬉しさの違いは誰にでも容易に比較できるだろう。
②風変わりな芯補充機能
INJECTOの目玉の性能は、これと言ってもいい。キャップを外して芯を補充するスタンダードなシャープペンシルと違って、これは芯タンクごと交換する仕組みになっている。文章で読んだだけではよく分からないかもしれないが、要するに芯を毎度一本一本補充するのではなく、芯を貯める内部の筒ごと、芯が入っている別の筒そのものと交換してしまえ!ということだ。しばらく使ってカートリッジ内の芯が少なくなると、透明の表示窓にオレンジ色のエンプティーマークが表示される仕組みになっている。(下図参照)
当然 "詰め替え用" のカートリッジも当時別売りされており、1本は商品に同梱してある。
で、やはりこの機能を搭載した意図があるはずだが、次のようなメリットとデメリットがある。
・メリット
説明書から抜粋させていただくと、
「芯をこぼして折ったり、手を汚すこともなく、又正常に適正な本数が補充されます。」
確かに直接芯に手を触れないため、補充時に芯に関するトラブルは全くないと言っていいだろう。
・デメリット
「めんどくさい」
確かに芯の補充にトラブルは付きものだが、そこまで潔癖症や神経質でなければ毎回カートリッジを入れ替える方が面倒臭く感じてしまうだろう。しかも普通、シャープ芯は同芯径であればどのシャープでも使用可能だが、INJECTOの場合は勿論INJECTOにしか使えない。(厳密に言うとカートリッジから取り出せば使えるのだが、取り出して芯に手を触れてしまう時点でこの機能の意味は消滅する。)シャーペンはこれ一途になれと言うことか。
第一これが便利な性能であれば現在のシャーペンまで受け継がれているはずである。(現在では、カートリッジのシャープは自分の記憶が間違っていなければ存在しない。)
だから「革新的」とは書かず「風変わり」と書いたわけだが、自分はその "たとえ便利では無くても特殊な部分に特化し、ロマンが詰まっている" 部分を評価している。
結果この機能は廃れてしまった訳だが、あえて芯を普通に入れない仕組みや、カートリッジというメカメカしい響きには男心をくすぐられるものがある。筆記具には利便性だけでなくそういった楽しみ方もあるということが少しでも伝わっただろうか?
またこういったちょっと「変な」(良い意味でだ)機能に挑戦するぺんてるの姿勢も自分は好きだ。(何様だよ)
③丁度いいマイナーさ
もちろんこのINJECTOの存在は古い文具に精通している人間なら誰しも知っていることだが、そこまで詳しくない人ではその数は少ないだろうと個人的には思っている。0.4mmというメジャーではない芯径に加え、なにより見た目がパッとしないからだ。
でも自分のように天邪鬼な人間は、皆が追っかけるものよりもあまり人気のないものを好きになってしまうもので(好きなアーティストに例えると分かりやすいかもしれない。自分だけが密かに知っていることの優越感というか)、かと言って全く無名の商品というわけでもなく(シャーペンの中には名前の無い悲しい者たちもいる)、丁度いいマイナーさを保ったINJECTOに自分の中で軍配が上がったというわけだ。
以上が自分がINJECTOに惹かれた主な理由である。因みに“INJECT”を日本語訳すると、なんと「挿入」らしい... 文字通りカートリッジを本体に入れることから来たのだろう、だが自分はそんな無骨な名前こそ、この風変わりなシャープペンシルに相応しいと思い続けている。
ではまた。
追記)自分は銀色のものしか所持していないが、実はINJECTOには他に3種(グレー、ブラック、ゴールド)のカラーバリエーションが存在する。下の写真は、自分がぺんてる公式のファンミーティングに参加した際に資料として見せて頂いたものだ。(数十人しか招待されないイベントだったため、なかなか貴重だと言える)
生きている間に是非全種コンプリートしたいものだ。
またINJECTOには、“Pop'npop INJECTO” というカラフルな可愛らしい廉価版が存在する。(当時の定価約600円と本家にくらべてリーズナブルだが、こちらもカートリッジ式だ!)